yasudacloudの日記

北海道に住むソフトウェアエンジニア

『システム思考の世界へ』の紹介

4月にオライリーから発売された『システム思考の世界へ』を読み終えたので所感を書いていきます。

なぜこの本を読んだか?

今年のGWは珍しくゲーム(Switch)ばかりして過ごしていました。

普段ゲームをやらないのは一度ハマるとやり込むため自制しているんですが、自堕落な感じがして良くないと思い某大型書店へ足を運び。

オライリーの本は大きい書店じゃないと取り扱ってないことが多いので、何となくオライリー出版から選ぼうと考えていました。数冊立ち読みした中では思考系の本が今の自分に必要かなと感じたのでこちらにしました。

購入してから5日後に読了。2,3日くらいでいけると思ってたので見積もりが甘かったです。

書籍について

以下の全12章から構成されており、ページ数は280ほど。

1章  システム思考とは何か?

2章  概念の統合を創り出す

3章  見方を変える

4章  自己認識こそがすべてのスキルの土台

5章  感情的な反応から、意識的な応答へ

6章  学習のシステム

7章  共に行うシステム的論拠付け

8章  フィードバックループの設計

9章  パターン思考

10章  モデリングを共に行う

11章  システム的リーダーシップ

12章  成功の再定義

価格は税込¥4,180と一般的な技術書の相場くらいです。

感想

最初に感想を書いていきます。

まず、この本は読み物として勉強になります。文章がとても論理的で上手くまとまっています。

専門用語が多数出てきますが、最初に丁寧に説明したり重要なものは繰り返し説明することで複雑さを解消しています。また、一般的な言葉と書籍内の言葉の意味が異なる場合にきちんと再定義することで誤解が生まれないように配慮されています。

特に言葉の言い回しにとても気を遣っているなという印象です。翻訳された方々もさぞ大変だったに違いありません。

例えばソフトウェア開発における"曖昧なこと"について次のように記述されています。

曖昧さとは、複数の解釈が成り立つ性質のことである。自分の考えをそのまま信じれば、それが正しいと思い込んでしまう。しかし深く見つめてみると、自分の考えが自分の見方と切り離せないことに気づく。自分の視点から見れば正しいかもしれない。だが見方を変えれば、自分とは異なるがやはり正しい場合もあるーーときには相反する考えさえも。

(『システム思考の世界へ』 P68)

また、他者の視点による思考を"理解すること"については

理解とは、相手の経験を、価値あるもの、意味のあるものとして受け止め、敬意を持って表現することである。それはまた、自分が設計しているシステムの中に、認知的にも感情的にも、自らも組み込まれているかのように思考し、振る舞うことでもある。

(『システム思考の世界へ』 P93)

と記載されています。日常用語であっても重要な事柄については誤解を生まないよう丁寧に補足されているのです。

ただ、例として挙げられている話の中でいまいちピンとこないことが何度かありました。ネガティブに感じたのはそこだけかな。

システム思考とは?

肝心のシステム思考について、自分の言葉で説明できるだろうか。

というのも、この本に照らし合わせてみると私はシステム思考とは反対の線形思考寄りだからです。

まず、線形思考については以下のように端的に説明されています。

線形思考はあまりに普遍的であり、多くの人はそれが思考形態の一つにすぎないことを認識していない。私たちはそれを単に「考える」と呼ぶ。それは、予測可能で合理的、手順に従い、白黒をつけたがり、物事をトップダウンでコントロールしようとする思考である。

(『システム思考の世界へ』 P6)

つまり、私たちの多くは無為意識に予測しやすい因果律から物事を考えがちであると読み取れます。

一方でシステム思考は非線形思考に分類されますが、これを一言で説明するのが非常に難しい。書籍の中でも「システム思考は、」で始まる説明があちこちに飛び交っていますし、単に線形思考の真逆と言うには少し雑です。ただ真逆と言うことでイメージはつきやすいと思います。

そこで、誤解を生まないようにあえてここで定義を明確にせず、ChatGPTに食わせて線形思考とシステム思考の例を作ってみました。

『スマホアプリのプッシュ通知の開封率を上げたい』という課題

線形思考の場合)

【線形思考の分析】開封率が少ないのは通知自体の数が少ない、もしくは文言が魅力的ではないからと考える。

【線形思考の解決】通知の頻度を増やす。または文言を思わず開いてしまうような内容に変更する

→開封率は短期的には上がるかもしれない。ただ、ユーザーがしつこいと感じると通知をオフにしたりアプリを削除に繋がるかもしれない。

システム思考の場合)

【システム思考の分析】通知の開封率はユーザーのアプリに対する信頼残高に左右される。つまり、通知を増やすことは長期的には信頼残高を減らす自己破壊に陥るのでは?と考える。

【システム思考の解決】現状開封率が低い(ユーザーが無視した)のは不要な通知を送っていると捉え、配信タイミングを調整するアルゴリズムを導入する。また、単に開封率だけに焦点を当てるのではなくユーザーがいつどんな状態、状況でアプリを操作しているかというコンテキストの理解に努める。

→配信数は減ったとしてもユーザーには(以前より)適切なタイミングで通知が届くようになり、長期的に開封率が上がり信頼関係が維持される。

上記はシステム思考を理解しやすいようにいかにも優れているような例にしていますが、実際には線形思考が有用なケースも多いと本では書かれています。どちらもあくまで思考方法の一つであり、状況に応じて使い分けるのが得策というわけです。

この本はそんなシステム思考についての実践指南書、体験記、教材です。知識というより知恵を授ける本という感じでしょうか。本の内容を一冊暗記しても仕事が捗ったり、評価に直結するわけでもありません。

他者の協力が必要なものもありますが、自分単独で明日から実践できるアプローチも幾つか紹介されています。

4章  自己認識こそがすべてのスキルの土台について

全ての内容は紹介できないので、個人的に一番面白かった『4章  自己認識こそがすべてのスキルの土台について』という章を取り上げます。

この章ではシステム思考を行うための思考の準備・心構えについて書かれています。他の章に比べればやや本筋から外れているようにも感じますが、日常のマインドセットを変えていくことの重要性を説いています。

自己認識とは、自分の経験に対してどのように反応するかを観察し、自分がどのように学ぶのが最適か、またどのようにして自分の考えを変えるのかを理解することである。

(『システム思考の世界へ』 P66)

自己認識を深めることで、あらゆる状況でも自身の感情や性格、性質、経験などを踏まえて俯瞰的に物事を考えることができる、という意味だと解釈しました。そしてこの自己認識には仕事面だけでなく個人的なことも全てが対象であり、何気ない習慣からも高めることができるらしい。この本ではモーニングノートを勧めています。たしかにセルフマネジメントに長けている人の多くは朝・午前中に特に集中したい作業を持っていくという話をよく聞きますね。

様々な状況下で自分がどう感じるかを明らかにしていくことで、次章の『感情的な反応から、意識的な応答へ』の実践に繋げることができるようになっています。構成が綺麗にできているので繰り返し読みたくなりますし、ページを逆から追っても結構スラスラ読めます。

著者について

著者のDiana Montalion氏の講演記事が見つかりました。

www.infoq.com

https://montalion.com/videos/

他にも書籍が出てないか調べてみましたが、特にヒットしませんでした。

最後に

こういった内面を指南する本を読むと新たな気づきや学びがある反面、自分の至らなさが浮き彫りになるのでやや複雑なところもあります。逆に考えると自分には成長の余地があるということで、前向きに捉えたいと思います。

久しぶりに読んだIT系の書籍がこの本で良かったです。気になった方は是非読んでみてください。

ちなみに先月の記事の後、留萌に行っていました。道の駅の鰊の蕎麦が美味かった。